この世に丸損はない


 「この世に丸損はない」

 これも亀石先生がよく言っておられた言葉です。


 女性の鑑定相談で夫婦問題のことをお聞きしていますと、たまに何とお気の毒な方かと思う方が来られるときがありますが、そういうときも冷静に対応するよう心掛けています。


 女性は身の上話を感情を込めて、さもドラマの悲劇のヒロインのように喋られる方がおられますので、占い師、鑑定士は喜怒哀楽の激しい人は向いていないように思います。


 夫の不倫や浮気で心に傷を負った女性は、占い師のところに足を運ばれ、夫の非を責め、自分に同情の気持ちを持ってくれる人がいるだけで心が癒されることもあります。
 占い師は、まずは聞き上手にならなければなりません。


 離婚は、わたくしはしたことがありませんので偉そうなことは申せませんが、裁判や調停にならなくてもかなりのエネルギーが要るということは想像に難くありません。
 どんなに納得ずくで離婚したとしても、心に何かしこりのようなものが残るのではないでしょうか。


 配偶者や不倫相手を恨んだり憎んだりする気持ちもよく分かります。
 そのようなとき、あなたが占い師でなくても相談される立場なら、目の前の哀れな人に標題の言葉を教えてあげて下さい。
 「この世に丸損はない」と・・・


 因果律からいえば、この世で起こるすべてのことは必然だと言われています。
 神も仏もあるものかと思えるような無慈悲な出来事も、偶然ではないそうです。目には見えない厳然とした因縁因果の法則によって、人と人とを結びつける運命の糸があるように思います。


 蒔かぬ種は生えぬで、夫や妻たる人から酷い仕打ちを受けたと思っておられる方も、そういう人と一緒になったという不思議な縁の巡り合わせに思いをいたせば、100パーセントの加害者も被害者もないように思われてなりません。

 
 この世は浮き世。
 長い人生行路は荒波もあれば、突然の大波に翻弄されることもあると思って、それを乗り切る術を身に付けておくほうが賢明です。
 この世に丸損はないという教えも、その術のひとつではないでしょうか。